猿とタイプライター

世界でいちばん役に立つ「小説の書き方」解説

0. 目次

ここは杉井光による「小説の書き方」解説ブログです。しかし実際は小説作法解説に見せかけた宣伝ブログなので、杉井光の著作をあらかじめ読んでいるとより内容をよく理解できるように書いてあります。神様のメモ帳、さよならピアノソナタ、放課後アポカリプ…

15. 雪国に学ぶ《説明》と《描写》

こんなブログを読んでいるあなたは自分で小説を書こうとしている人だろうから、これまでに《説明》と《描写》についての話をいくつか聞いたり、自分で意識して調べたりしたことがあるはずである。いわく、小説では説明だけではなく描写しなければならない、…

14. どんな文章力も雪国の白に染まる

くだんの編集者からせっつかれたため、第二部開始、である。 第二部では、実際の執筆段階において考えることに踏み込んでいこう。まずは、文章そのものの話から。 * * * 文章力、という摩訶不思議な言葉がある。だれもが、実態をよくわかっていないにも関…

13. はじめに:星を見上げることについて

さてさて、キャラクターはどこからでも連れてきていいとわかった。物語の構造についてもまずまず理解した。書くべき題材も決まっている。いよいよ実際に物語を形にし始めるときだろうか? 残念ながら、その通りだ。 なにが残念なのか。 小説は企画をこねてい…

12. 名優に資金のすべてを

さて、ここまで物語の構造について長々と書いてきたわりに具体的な作り方には全然踏み込んでこなかったわけだが、その前に構造なんぞよりも重要なものを作っておかなければならない。キャラクターだ。 キャラクターを魅力的にする理由は今さら説明するまでも…

11. 地図を見ていてもラピュタにはたどり着けない

前回の記事を読んで誤解しないでいただきたいのだが、僕はべつに物語を三幕構成で作りましょうと言っているわけではない。構成がまずあってそこに物語るべきものをはめこんでいくのではない。物語るべきものが先にあって、それをどのように効果的に語るかを…

10. 紅の豚に見る三幕構成

起承転結よりもはるかに論理的なストーリー構造作法に、ハリウッド映画などの脚本でよく用いられる"Three-act structure"(三幕構成)がある。これはとても参考になるので簡単にご紹介しよう。 三幕構成はその名の通り、一本のストーリーを三幕に分ける。 ・…

9. 起承転結の罪

起承転結、という言葉を聞いたことがない人は、こんなブログを読んでいる人の中にはまずいないだろう。日本で小説作法とかストーリー作法の話になると、かなりの高確率で持ち出される概念だ。 しかし、起承転結という考え方は物語にとっては役に立たないを通…

8. 地図はあなたをどこへも運んでくれない

あなたも小説を書こうとしている人間なら、プロットについての話題が気になって気になってしょうがないことだろう。プロットはほんとうに必要なのだろうか。必要だとして、どうやって組み立てるべきなのか。どんなプロットが良いプロットなのか。 結論から先…

7. テーマという名のただの目印

物語の背骨が見つかったら、次に作品のテーマを見つける。 テーマという言葉は様々な状況で様々な使われ方をするが、小説の書き方、とくに本ブログの文脈においては、「一本の物語を通して読んだとき、最も強く読者の心に届く概念」のことである。 それは物…

6. 骨は作るのではなくそこに沈んでいる

物語のクライマックスでどんなふうに読者を感動させるかが決まったら、次にやることは、僕が個人的に「骨を洗い出す」と呼んでいる作業である。 骨というのは物語の骨格のことなのだが、「骨格を作る」のではない。あくまでも「砂にまみれてしまって見えない…

5. 物語に火をつけろ

前振りも終わったのでいよいよ物語の作り方の説明を始めようと書いておきながらいっこうに説明を始めないまま前回の記事は終わってしまった。今度こそ物語の作り方の説明に入る。 しかし、ここが最も難しい。 ひとまず、「あなたにしか書けないあなたの読み…

4. あなたが読みたいものはあなたが書くしかない

長い前振りも終わったので、いよいよ物語の作り方の説明を始めよう。 ところであなたは、どんな物語を書くのか決めているだろうか? その題材は絶対に面白いと確信できるだろうか? * * * なにを書くべきかについては、多くの先人たちが多くの言葉を残し…

3. なぜ人は小説に金を払うのか?

前回の記事の最後で、ある段階までは目的論を固めることも重要だと書いた。 僕は小説を書いて売ることを仕事にしている。生活費を得たり、自己顕示欲を満たしたり、達成感を得たりといった複数の大きな目的に対して、小説を書くという方法が最適だと判断した…

2. 目的論と方法論の相対性

前回の記事では、小説を書くという作業は選択の連続であることを説明した。選択の連続は、悩みの連続でもある。 ここで、「目的論と方法論の相対性」という考え方が必要になる。 なにやらいきなり難しそうな話になったからといって読むのをやめないでいただ…

1. 無限の数の猿はシェイクスピアになれるか?

小説の書き方を解説するにあたって、最初にどうしても避けて通れない問題がある。それは、「小説を書くというのはつまるところどういう行為なのか?」だ。 * * * 僕は「1冊書くのにどれくらい時間かかるんですか?」と訊かれるたびに答えに困る。小説家と…